カンパニー読んだよ

空が高くなり雲の圧迫感がなくなってきたこの頃。今の季節はとても好きです。


カンパニーを読みました。おもしろかったです。ほんとに。

最初は井ノ原くんがこの人(青柳さん)の役をするのかと意識しながら読んでたけど、すぐに青柳さんは青柳さんと捉えて読むようになった。違う人物だから当たり前と言えば当たり前だけどね。私があそこで見たのは青柳さんであって他の誰でもなかったよ。


青柳誠一という人物。共感するところが多かった。彼が考えていることそうだし、取り巻く環境が変化していく様も既視感のようなものがあった。

上司とカンパニーの、というか悠の間に挟まれて仕事をしなければならないこと。その時悠といる時は悠の意見が強く感じられて、上司といる時は上司の......という気持ちになること。

嫁さんに家を出て行かれてからその大切さに気づくこと。辛い気持ちが長く続いたこと。その時に部署の移動、実質のリストラ宣告をされたこと。自殺を考えたこと。

どれも人生であり得る、むしろ人生ってそんなもんだよね、とうなずける。そこに青柳誠一という人物が生きていると自然に感じられる。

その中でも1番共感したのが、久しぶりに別れた嫁さんと会った時に、失っている間焦がれていたよりも随分魅了が薄れたように見えた場面。思い出ばかりが美化されて、その美化されたものを更に美化してということを繰り返してたのかな。失って気付いた大切なものを今度は振り返って見すぎたあまり、変わりつつある現実を見てなかった感じ。娘も始めは母親についてきて不満は無さそうだったけど後半から、丁度青柳さんが仕事に心血を注ぎ始めた頃から最近のお母さんが面倒くさいと言うようなことを言っていた。

これすっごく分かるというか身に覚えがある。最初微妙だなと思っていた方が後々良くなって、初めに良かった方は最後になると微妙になる、最初と最後の結果が入れ替わる人間関係は体験も含めて山ほど見てきた。世の中案外そういうものなんだな。


話はすっとんで那由多くんと紗良のあのシーン。肋骨に痛みを抱えながらステージ上で踊りきった紗良の執念とプロ根性はあまりにも凄かった。それでも残りの幕はできないと周りに説得されてバレエ人生を降板で締めくくった紗良の悔しさは辛い以外になかった。周りの人も悔しい思いをしてるだろうけど私も痛いほどしてるけどこれ以上に紗良がその思いを抱えていると思うと........ほんとうにほんとうにつらい。

那由多くんは見てて痛い痛しかった。リフトに失敗して紗良の肋骨の間に指が入りこんだ感覚。想像するだけで怖い。実際に味わった那由多はトラウマになりかけて紗良の説得をしている間も吐き続けてたのを聞いて哀れに思ってしまった。まずは謝るべきと言うには勇気がいるほどに練習を頑張ってた。ファンに応援されてファミリーも期待されていて、自らリフトをやりたいと、悠に無理だと言われてもやると言い張り紗良と瑞穂さんになんとか許可をもらってのことだったから余計に那由多が感じる責任は強かったのではと思う。

那由多の気持ちは大丈夫だけど体がダメと言っていた場面で那由多の為人が出ていたなと思う。切り替えるべき時に気持ちを切り替えられているけど体が拒絶反応を起こして吐いている。強さと弱さがある那由多を見るとどうしても責める気持ちは出てこない。

ここら辺の場面は辛すぎて読んでる時ずっと下唇の裏を噛んでたし泣いてた。


最後に悠が由衣に会いにいく場面はめっっっちゃ素敵だった。由衣の強さの根底にある我慢強さと優しさを見つけて手を伸ばしてくれる人がいて本当によかった。由衣ちゃんも悠も報われてください。

そして悠が日本に青柳さんを引き抜きに来たところで号泣したし、今から書いてて思い出し泣きしてるけど、本当に良かった。青柳さんを認めてくれて。青柳さんが報われて。

それもこれも悠が2人の力を認めてくれたということなんだけど、認めてくれたよりは認めざるを得なかった、2人が認めさせたが近いかな。だけど一生懸命やってる最中はそんなこと考えずにとにかく出来ることをやる、そんなスタンスだからこそ結果を見た時に良かったと思うのだろうな。人生ってそういうもの。

青柳さんと由衣が悠を支えて、最後には悠が2人を迎えに行く。

凄く素敵な一部始終を見せてもらった。

これまでの事もこれからの事も分からないけれど、私が見たみんなの1年足らずの日々は素晴らしく輝いていた。